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相手との関係をONにするコミュニケーションスキル

 
すぐに使える!相手との関係をONにするコミュニケーションスキル
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会社でのコミュニケーションには、「おはようございます」などの挨拶から、事務的な報告や指示、複雑な事情や感情が含まれる相談事まで様々なものがあることでしょう。

普段の何気ない会話の中で培われた、この人には「通じる(わかってもらえる)」・「通じない(わかってもらえない)」といった関係性が、仕事を行う上でのコミュニケーションのしやすさ、しにくさに影響することも多いのではないでしょうか?

ルミナスでは認知行動療法の技法を用いた産業医面談を特色としています。

本日は、認知行動療法を行う上で必要となる「相手とONの関係を作るコミュニケーションスキル」についてお話ししたいと思います。

これは、医師やセラピストなど専門職に限ったことではなく、広く使えるスキルです。

このブログを読んでいただいている、会社の人事・総務、メンタルヘルス担当者の方たちに是非お役に立てていただけたらと思います。

ぶつからない関係つくり

認知行動療法では、「セラピスト」は「クライアント」と「共同関係」を築くことが前提になるため、認知行動療法について学ぶ前に、まずコミュニケーションスキルを学び習得することを心がけます。

本人が主体的に、自分の問題を同定し、その問題を自分で解決できるように導くのが、認知行動療法ですが、最初の関係つくりで、まず「ぶつからない関係」を作ることが大前提になるのです。

ぶつからない関係つくる⇒共感で関係を「ON」にする⇒サポーティブ(支持的)な関係から、一歩進んで、本人が自分で解決法を見つけられるような問題解決を認知行動療法では目指します。問題解決に当たっては「感情・認知(考え)・行動・身体」の4つの分野に焦点を当てた「質問」を用いますが、これらについては、また別の機会にお話ししましょう。

「ON」「OFF」の関係とは?

さて、共感で関係を「ON」にするとはどのようなことでしょうか?

「ON」「OFF」の関係とはどのようなことをいうのでしょう。

「OFF」の関係

「OFF]の関係では、相手が言っていることをよく聞かずに、自分の意見を押し付けたり、相手が間違っていることを指摘してしまうため、相手は「分かってもらえていない」と感じます。

「ON」の関係

「ON」の関係では、相手が言っていることを良く聞き、相手が言いたいことがきちんと伝わったことを示したため、相手は「分かってもらえた」と感じます。

「ON」と「OFF」の例

次の例で実際に考えてみましょう。

一生懸命、会社の昇級試験の勉強をしたAさん。残念なことに試験に落ちてしまいました。

Aさん「あんなに頑張ったのに、試験に落ちてしまってもうお終いだよ・・・自分ではかなり出来たと思ったのに・・・僕の人生、こうやって失敗ばかりなんだ・・・もう何をやっても無意味だ・・・本当に最悪だ・・・」

Aさんの発言に、あなたは、どう答えますか?

OFFにする会話を一緒に考えてみましょう

  • 「だから、あなたはダメなんだよ!弱音を吐く時間があったら、この次に向けて勉強しなさい」
  • 「私の若い頃なんて、もっと大変だったんだから・・・」
  • 「人生ラクありゃ苦もあるさ・・・まぁ何事もポジティブに考えた方がいいよ!」
  • 「ゆとり世代はこれだから困る。根性が足りないんだよ」

それでは「ON」にするには、どうしたらよいでしょうか?

相手との関係をONにする5つのコツ

相手が話しやすい工夫をする

①あいづちを打つ 「へえ」「そう」「そうなんだ」「なるほど」・・・

②順接の接続詞を使う「それで?」「それから?」「そして?」

③相手の言葉を繰り返す「あんなに頑張ったのに、試験に落ちてしまってもうお終いだよ」「頑張ったのに、試験に落ちてしまって、もうお終いだと思っているんですね」

④表情や、しぐさにも注意する(アイコンタクト、ゆとりを持った態度、声の調子)

非言語コミュニケーションの影響は大変大きいといわれています。

相手の気持ちに共感する

⑤相手の感情をキャッチする

怒り: 憤り、イライラ、苛立ち、・・・:不当な目に遭っていると感じているサイン

悲しみ: 哀しい、落ち込み、抑うつ、・・・:失ったものの大切さを伝えるサイン

不安:恐怖、おびえ、心配、困惑・・・:自分の身に危険が迫っているというサイン

喜び:楽しい、嬉しい・・・:生きる上での活力源

共感をするためには、会話をしながら、相手がどんな「感情(気持ち)」で話しているかをキャッチすることが大切です。

ONにする会話を考えてみましょう。

  • 「一生懸命に勉強したのに、結果が出なかったらとても悲しいよね・・・」
  • 「試験だけでなく、この先も失敗したら・・・と思うと、確かに不安になってしまうよね・・」
  • 「「もうお終いだ」と思うと、それは泣きたくなるよね・・・」
  • 「「自分の人生失敗ばかり」って感じちゃうと辛いよね・・・」

「辛いですね」はなかなか便利な言葉です。

ON の関係、OFFの関係の見極め方

では、相手と「ON」の関係になっているのか、「OFF」の関係になっているのかは、どのようにして見極めることが出来るでしょうか?

これは、相手のリアクションによって、見極めることが出来ます。

「OFF」の関係

  • 相手が言っていることをよく聞かずに、自分の意見を押し付けたり、相手が間違っていることを指摘してしまう。
  • 自分の意見が伝わっていないと感じるので、「でも」「しかし」で反論したくなる。

例「ゆとり世代はこれだから困る。根性が足りないんだよ」「でも、私だって、精いっぱい頑張ったんです(この人には通じない、話さなければよかった、、)」

「ON」の関係

  • 相手が言っていることを良く聞き、相手が言いたいことがきちんと伝わったことを示している。
  • 「伝わっている」という感覚があるので、「そうなんです」「確かに」等のフレーズが自然に出る。

例「一生懸命に勉強したのに、結果が出なかったらとても悲しいよね・・・」「そうなんです。がっかりしてしまったんです・・・(わかってもらえた、、少し気持ちが楽になった、、)」

相手の感情をキャッチする

認知行動療法の研修会では、相手の感情をキャッチする(つかまえる)練習を行います。セラピスト役、クライアント役を交互に担当して、実際の会話のやり取りを行い「そうなんです」や「でも、、」が自然に出てくる感覚を味わいます。

※本日は詳しく扱いませんでしたが、共感的、支持的に対応しても、相手が乗ってこない、つまりONにならない場合もあります。

このようなときは、相手には「葛藤」が存在し、相反する二つの考えを抱えていることが考えられます。この時は、相手がそのような状況にあることを、セラピストがクライアントに提示し「そうなんです」が返ってくれば「ON」になります。

※参考文献「認知行動療法を始める前に学んでおきたいコミュニケーションスキル・トレーニング 著者 堀越勝 発行独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター

「ON」の関係を作る目的は、次のステップへ移行するため

さて、ここで、あらためて確認しておきたいのは、

認知行動療法で「ON」の関係を作る目的は、次のステップへ移行するためであるということです。

ぶつからない関係つくる⇒共感で関係を「ON」にする⇒サポーティブ(支持的)な関係から、一歩進んで、本人が自分で解決法を見つけられるような問題解決を目指すのが認知行動療法でしたね。

本人が主体的に、自分の問題を同定し、その問題を自分で解決できるように導くための関係性を築くために「ON」の関係を作るコミュニケーションの「技術」を用いるのです。

いつでも相手の感情をキャッチできる人になる必要はありません。そんなことをしてばかりいたら、疲れてしまいますね。「良い人」になる必要はなく、ある限られた時間の中、セラピストとクライアントという関係の中で「コミュニケーション」のスキル(技術)を用いるということです。

これを会社の人間関係に置き換えると、ある局面においては意識して「ON」の関係つくりを行うことが、結果的に相手の心の扉を開けて、自分の気持ちを正確に伝えたり、業務を行う上での建設的な行動につながるとよいのではないかと考えます。

どんなに相手に伝えたいことがあっても、扉が堅く閉ざされた状態(OFF)では、どんなに良いアドバイスでも相手の心には届きません。まずは、相手の扉を開く(ON)ことから、コミュニケーションが始まります。

相手の機嫌を取ることが目的ではありませんし、甘やかすことでもありません。

相手の話を聴くときに、自分の考えや判断を先に話してしまったり、過去の経験を話してしまうということはよく起こります。自分が相談して、逆の立場になった経験も、誰しもしていることでしょう。

感情レベルで「そうなんです」が生まれたとき、相手との距離はぐっと近づくことが出来ます。

ふだんの何気ない日常の会話の中でも、少し意識するだけで、関係性が改善するのではないでしょうか?

コミュニケーションは「技術」です

コミュニケーションの「能力」に自信がない、という言い回しを、よく耳にします。

しかし、コミュニケーションは、才能やもって生まれた能力ではなく、「技術」です。

技術の習得には、理論を学習したり、スキルを高めるための練習が必要です。

小学生低学年頃から、学習してもよいのではないか?と私は考えています。

 

コミュニケーションレベルの立ち位置は、

1.あいさつ

2.事実、文字、数字

3.信条

4.感情

患者に多いのは3や4、医療者に多いのは2といわれています。「事実」を受け取るのは痛みを伴うので、工夫が必要ですが、例えば外来の診察室でも、限られた時間の中では、事実や数字のみが告げられ、感情のフォローがない場面も、ドラマなどではよく見かけますね。

医者が一方的に考えを「押して」しまい「OFF」の関係に終始してしまうケースは、今も多いのではないかとも思います。

まとめ・認知行動療法の技法を用いた産業医面談

本日は、相手との関係つくりに効果的なコミュニケーションスキルについてお話ししました。

相手の感情をキャッチすることによって、共感で関係を「ON」にできると、相手からは「そうなんです」という言葉が返ってきます。

認知行動療法の技法を用いた産業医面談では、産業医面談という、通常の外来診療よりも時間を確保できる状況で、「ON」の関係をまずは築いたうえで、次のステップ、すなわち認知行動療法の様々な技法を用いて、本人が自分で解決法を見つけられるような問題解決を目指します。

コミュニケーションスキルは、医療者のみに限ったスキルではなく、広く応用できるものです。

人事総務、衛生管理者など、メンタルヘルスの窓口となっている方たちには、特に役立てていただければと思います。

産業医と協力しながら、一歩ずつ取り組んでいきましょう

 

 

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